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IAS 24「関連当事者についての開示」を解説【学習が手薄になりがちな範囲です!】

どうも、クマガワ@Kumagawa_Pro)です!

 

さて、今回のテーマは、

IAS 24:Related Party Disclosures(関連当事者についての開示)です。

 

このIAS24号もいわゆる“IFRS”を構成する基準書の一つなのですが、仕訳等の会計処理に直接影響を及ぼす内容は含まれておりません。影響があるのは財務諸表の「開示」のみです。

そのため、IFRSの学習をしている際、どうしても手薄になってしまいがちな項目でもあります。場合によっては「IFRSは勉強したことがあるけど、『関連当事者についての開示』なんて全然知らないよ!」ということも普通にあり得そうなくらいです 苦笑

 

そこで今回は、IAS24号「関連当事者についての開示」について、IFRSに準拠した会計士資格であるACCA(英国勅許公認会計士)を取得している私クマガワが、ACCAの受験を通じて得た知識を元に解説させて頂きたいと思います!

 

IAS24号の目的・存在意義

IAS24号は、一定の「関連当事者(related party)」が存在する場合に、企業とその関連当事者との関係性や両者の間の取引等に関する開示を行うことを要求しています。

そのような規定を設ける目的は、以下のように説明されています。

企業の財政状態や経営成績が関連当事者の存在ならびに関連当事者との取引および未決済残高により影響を受けているかもしれない可能性について注意が払われるよう、必要な情報の開示を財務諸表で行うことを規定することである。

企業と関連当事者との間の取引は、不公正な内容や方法等で行われる危険性が高いです。たとえば、「子会社に相場よりも遥かに高い値段で商品を売り付けてやれ!」ですとか、「あまり働いてはいないけど、俺達は役員なんだから報酬をたくさん貰っちゃおう!」ですとか、そんな具合です。

そのため、関連当事者との関係性や取引について、一定の事項を追加で開示することが求められているわけです。

 

なお、ACCAの問題集で時折出て来たのが、

「関連当事者が存在しているとはいえ、その者との取引は公正な内容や方法で行われている。だから、IAS 24に基づく開示は不要なのでは?」というような主張をする登場人物(経営陣etc)でした。

結論から言いますと、たとえ公正な内容や方法等で取引が行われていたとしても、それだけでは関連当事者に関する開示を省略することはできません。その理由ですが、取引そのものが開示されなければ、その内容や方法等が公正なのかどうか、財務諸表の利用者が知る機会すら与えられないからです。また、そもそも、関連当事者との取引という時点で公正な内容にはなり得ない、という言い方もできます。

(※なお、取引が公正かどうか以前に、そもそも重要性が低ければ関連当事者に関する開示を省略することが可能です。)

 

関連当事者の範囲

さて、ここまでで既に「関連当事者」という言葉を連呼してきましたが、

ここでいよいよ、具体的にはどのような個人や企業が「関連当事者」に該当するのか、

関連当事者の「範囲」についてご説明いたします。

 

この点、IAS24号は、関連当事者を個人と企業に分けて規定しています。

ですので、関連当事者の範囲を覚える際も、個人の場合と企業の場合とを明確に切り分けて整理した方が頭に残りやすいかと思います。

以下でも「個人」と「企業」とで別々にご説明いたします。

 

関連当事者となる「個人」

ある個人またはその近親者が、財務諸表を作成する企業(以下、「報告企業」といいます。)にとって以下のいずれかの関係にある場合には、その個人またはその近親者は報告企業にとって関連当事者に該当します。

① 報告企業に対し支配または共同支配を有している。
② 報告企業に対し重要な影響力を有している。
③ 報告企業またはその親会社の経営幹部の一員である。

「支配(control)」および「重要な影響力(significant influence)」は、連結会計や持分法の対象になるかどうかを判定する際に用いる基準と同じものであり、議決権比率が重要な判断材料の一つとなります。

一般的には、50%超を保有していれば「支配」を、20%以上であれば「重要な影響力」を、原則として有しているものと言われます。

 

というわけで、ざっくりまとめますと、

「大株主(※)」か「役員」である個人またはその近親者は関連当事者になるということになります。

このように、個人の場合、関連当事者の判定は比較的シンプルだといえます。

※「支配」や「重要な影響力」の有無は持株比率だけで判断されるものではありませんが、話を単純化するため、語弊を恐れずに敢えて「大株主」と言い切った次第です。

 

なお、IAS24号は「個人またはその近親者(a close member of that person’s family)」と言っているので、本人だけではなくその近親者も含まれる点に注意が必要です。たとえば「大株主の妻」も関連当事者になります。

ここで、IAS24号における個人の「近親者」とは、企業との取引において個人に影響を与えるか、または影響されることが想定される親族の一員であり、以下の(a)~(c)を含む、とされています。

(a) 個人の子および配偶者または家庭内パートナー
(b) 個人の配偶者または家庭内パートナーの子
(c) 個人または個人の配偶者もしくは家庭内パートナーの扶養家族

「配偶者」だけではなく「家庭内パートナー」も含まれているところが、さすがIFRS、なんとも国際的ですよね!

 

関連当事者となる「企業」

ある企業が、報告企業にとって以下のいずれかの存在である場合には、その企業は報告企業にとって関連当事者に該当します。

① 報告企業と同一グループに属している。
② 一方が他方の関連会社または共同支配企業である。
③ 両企業とも同一の第三者の共同支配企業である。
④ 一方が第三者の共同支配企業であり、他方がその第三者の関連会社である。
⑤ 報告企業または報告企業の関連当事者である企業の従業員の退職後給付制度である。
⑥ 関連当事者に該当する個人またはその近親者によって支配または共同支配されている。
⑦「報告企業に対し支配または共同支配を有している」者に該当する個人またはその近親者がその企業に対し重要な影響力を有しているか、またはその企業の経営幹部の一員である。
⑧ 報告企業またはその親会社に経営幹部サービスを提供している。

 

……さて皆様、以上の項目を全て覚えることは可能だと思われるでしょうか?

少なくとも私は無理です 笑。ほとんどの読者の方が私と同じではないでしょうか?

実務では基準書の内容を暗記する必要は無いため別に構わないのですが、

問題はACCA等の資格試験の場合です。

 

この点、私は以上の8項目を全て逐一覚えるようなことはしませんでした。

その代わり、「関連当事者に該当しないケース」の方をいくつか覚えて試験に臨みました。

具体的には、以下のような内容を頭の中に入れておきました。

単に共通の役員(director)がいるというだけでは、関連当事者にはならない。

報告企業の子会社のdirectorがcontrolを有する企業(報告企業とは資本関係無し)は、その子会社にとっては関連当事者になるものの、そのdirector本人が報告企業にとって関連当事者に該当しない限りは、当該企業は報告企業にとっては関連当事者とはならない。

「報告企業の子会社に対して重要な影響力を有している別の企業」は、それだけでは関連当事者には該当しない。(たとえば、報告企業が60%を保有している子会社の株式を40%保有している企業である。)

「報告企業が重要な影響力を有している企業が重要な影響力を有している企業」(つまり“関連会社の関連会社”ということである。)は、それだけでは関連当事者には該当しない。

少なくとも資格試験においては、以上のような「関連当事者っぽく見えるけど実は関連当事者ではない」企業を見抜けるようになることが重要だと考えます。

 

開示事項

最後に、IAS24号がどのような開示を要求しているのを具体的に見ていきます。

なお、実務ではもちろん、資格試験の対策としても、今からお話しする開示事項を細部まで暗記することは不要だと思います。というより、暗記しようとしても非常に難しいのではないでしょうか……。

ただ、ラストにお話しする『関連当事者に関する開示事項についての注意点』はしっかりと押さえて頂くことをオススメします。

 

とにもかくにも、IAS24号では、以下の3種類の開示が規定されています。

(1) 親会社と子会社の関係に関する開示
(2) 経営幹部の報酬に関する開示
(3) 関連当事者間取引に関する開示

 

以下、(1)~(3)について、それぞれ詳しくご説明いたします。

 

(1) 親会社と子会社の関係に関する開示

IAS24号は、関連当事者間で取引があったかどうかに関わらず、親会社とその子会社の関係を開示することを要求しています。

企業は、親会社の名称を開示し、親会社が最終的な支配当事者と異なる場合には、最終的な支配当事者の名称を開示しなければなりません。

また、親会社も最終的な支配当事者も公表用の連結財務諸表を作成していない場合には、公表用の財務諸表を作成する次順位の親会社の名称を開示する必要があります。

 

(2) 経営幹部の報酬に関する開示

企業は、経営幹部の報酬とその内訳を開示しなければなりません。

ここでいう「内訳」は以下の5つを指します。

(a) Short-term employee benefits(短期従業員給付)
(b) Post-employee benefits(退職後給付)
(c) Other long-term benefits(その他の長期給付)
(d) Termination benefits(解雇給付)
(e) Share-based benefits(株式報酬)

 

なお、企業が他の経営管理企業から経営幹部サービスを得ている場合に関して、その経営管理企業が従業員や取締役に支払ったまたは支払うべき報酬についての開示は要求されません。

 

(3) 関連当事者間取引に関する開示

関連当事者との間で取引が存在する場合には、関連当事者関係が財務諸表に与える潜在的な影響を把握するのに必要となる取引および未決済残高に関する情報と、関連当事者関係の内容追加的に開示することが求められます。

このとき企業は少なくとも、

① 取引の金額
② 未決済残高ならびに担保の有無や決済の方法および保証の詳細な内容
③ 未決済残高に対する貸倒引当金
④ 関連当事者から支払われるべき不良債権に関する当期費用計上額

の4つを開示しなければなりません。

さらに企業は、経営管理企業によって提供される経営幹部サービスの負担額についても開示する必要があります。

 

また、これらの開示は、

(a) 親会社
(b) 共同支配企業または企業に対し重要な影響力を有する企業
(c) 子会社
(d) 関連会社
(e) 企業が投資企業となっている共同支配企業
(f) 企業またはその親会社の経営幹部
(g) その他の関連当事者

というカテゴリーに区分して行います。

ただし、企業の財務諸表に与える関連当事者間取引の影響を理解するために個々の開示が必要とされる場合を除いて、類似の性質を有する項目については総額で開示することが認められています。

 

なお、政府関連企業(政府による支配、共同支配、または重要な影響を受けている企業のこと。)については、政府や同一政府と関係を有する他の政府関連企業との取引と未決済残高に関する開示が免除されています。ただし、この規定に基づいて政府関連企業が開示を省略する場合は、政府の名称、政府との関係、重要な取引の内容や金額等を開示する必要があります。

 

関連当事者に関する開示事項についての注意点

まず、「(1) 親会社と子会社の関係に関する開示」については、たとえ親会社とは一切取引を行っていない場合であっても開示が要求される点が重要です。

 

また、「(2) 経営幹部の報酬に関する開示」については、「(3) 関連当事者間取引に関する開示」とは別に開示が必要になる点に注意です。

報告企業の経営幹部は関連当事者に該当しますので、報酬の支払いは「関連当事者間取引」に該当し、「(3) 関連当事者間取引に関する開示」が必要です。それに加えて、別途「(2) 経営幹部の報酬に関する開示」を行い、5つのカテゴリー(短期従業員給付、退職後給付、その他の長期給付、解雇給付および株式報酬)ごとの総額を開示しなければなりません。

なお、「(2) 経営幹部の報酬に関する開示」において求められるのは「5つのカテゴリーごとの総額」です。役員個人別の内訳までは不要です。(ただし、「(3) 関連当事者間取引に関する開示」の方で個人別の詳細を開示する必要が生じるケースもあります。)

 

今回はここまでです。

ご閲読ありがとうございました!

 

今回の主な参考文献

『テキスト国際会計基準 新訂版』(編著:桜井久勝、白桃書房

今回の記事は、この本に大いに助けて頂きました!

というより、IAS24号に関するページはほぼ全ての箇所を引用させて頂いた感じです……。

編著者の桜井先生とIAS24号の箇所を執筆された金光明推先生には改めて感謝です!

ありがとうございました!!


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