ACCAの試験制度やキャリア等

【悲報】日本だとACCAの「実務要件」をクリアするのが難しそう……。

どうも、こんにちは!

「本当の『プロ』になるためには、資格だけでなく実務経験も大事だよ?」

そんなことは分かっています。『プロリーマン』志望のクマガワ@Kumagawa_Pro)です!!

 

さて、「実務経験」といえば、

ある程度“格の高い”資格ですと、試験に合格しただけでは取得ができないパターンがほとんどです。

指定された内容の実務経験を、決められた年数、積むことが要求されます。

 

たとえば、日本の公認会計士の場合、正式に「公認会計士」と名乗るためには、監査や会計等に関する実務経験が2年間必要です。

税理士も同様に、税務や経理等に関する2年間の実務経験が要求されます。

 

また、弁護士については、実務経験こそ必要ありませんが、司法試験に合格後、専用の教育機関にて「司法修習」という研修を1年間受講しなければなりません。

 

そして、資格を取得するために「実務経験」が要求されるのは、日本の資格だけではありません。

日本でも有名な米国公認会計士(USCPA)も、正式なライセンスを得るためには、一定の実務経験が必要となります(州によって、要求される実務経験の内容や年数が異なります)。

 

私が現在挑戦している英国勅許公認会計士(ACCA)も、試験に全科目合格することに加えて、一定の実務要件を満たさなければ、正式に「会計士」と名乗ることができません。

 

今回は、英国勅許公認会計士(ACCA)の資格を取得するのに必要な「実務経験」について、Q&Aのような形でお話ししていきたいと思います。

 

※なお、今回の記事ですが、全体を通じてACCA協会のサイトを参考に執筆しております。

 

 

「PER」って何のこと?

ACCAにおける実務要件ですが、「PER」という略称で呼ばれることがあります。

これはPractical Experience Requirement」の略称です。

 

決して「株価収益率」のことではございませんよ!

(職業柄、どうしてもそちらの方を思い出してしまう私です 汗)

 

ACCA Affiliate? Member? って何??

「ACCA Affiliate」とは、「ACCAの資格試験に(全科目)合格しただけの状態」を指します。いうなれば、会員」「英国勅許公認会計士と呼べるステータスです。

そして、「ACCA Affiliate」の状態から、今回の記事のテーマである実務要件(PER)を満たし、かつ、職業倫理等のオンデマンド講義を修了すると、晴れてACCAの「正会員」になれます。この「正会員」のステータスを、「ACCA Member」といいます。

 

ちなみに、試験の申込みのためにACCA協会に会員登録しただけの状態、すなわち、資格試験を受験している途中のステータスを、「ACCA Student」(学生会員)と呼びます。

 

何年間の実務経験が必要なの?

36か月間、すなわち3年間以上の実務経験が要求されています。

 

どんな内容の業務が、実務経験として認められるの?

ACCA協会のサイト(https://www.accaglobal.com/gb/en/student/practical-experience-per/performance-objectives.html)によれば、

以下の17個のうち、最低でも4つの項目に携わる必要があります。

Corporate and business reporting

  1. Record and process transactions and events
  2. Prepare external financial reports
  3. Analyse and interpret financial reports

Financial management

  1. Evaluate investment and financing decisions
  2. Manage and control working capital
  3. Identify and manage financial risk

Management accounting

  1. Evaluate management accounting systems
  2. Plan and control performance
  3. Monitor performance

Taxation

  1. Tax computations and assessments
  2. Tax compliance and verification
  3. Tax planning and advice

Audit and assurance

  1. Prepare for and plan the audit and assurance process
  2. Collect and evaluate evidence for an audit or assurance engagement
  3. Review and report on the findings of an audit or assurance engagement

Advisory and consultancy

  1. Business advisory

Data, digital and technology

  1. Data analysis and decision support

「会計に関する仕事」であれば、幅広く該当するというイメージです。

しかも、嬉しいことに、従事する企業の規模や業種は一切関係ございません。上場企業の“ご立派”な経理職じゃないとダメ、なんてことは全然ありません。

 

したがって、職務経験の「内容」については、あまり心配する必要が無いように思われます。

 

実務経験は、合格してからのものしか認められないの?

答えはNOです。

全科目に合格して「ACCA Affiliate」になる前の実務経験でもOKです。

 

ACCAの試験に全科目合格すること自体、3年間ほど掛かってしまうことを考えますと、

「ACCA Affiliate」になった時点で、ほとんど全ての人が実務経験を満たしていると思われます。

(ACCAに関心を持つのは、大抵の場合、既に会計関連の仕事に就いている人でしょうし)

 

3年以上の実務経験があることは、どうやって証明するの?

……さて、これが今回のメインテーマでございます。

このお話をさせて頂きたかったがために、この記事を書いているようなものです 笑。

 

今まで見てきましたように、ACCAにおける「実務要件」(PER)は、「3年間の実務経験を積む」という部分だけであれば 非常にハードルが低いです。

問題となるのは、自分の実務経験をACCA協会に申請をして承認を受ける手続きです。

 

申請はオンラインで行うのですが、その内容を、「Practical experience supervisor」にメールベースで認証をしてもらう必要があります。

 

「Practical experience supervisor」とは、“勤務先の上司” ではあるのですが、ただの上司では足りません。

・is a qualified accountant*
・works closely with you
・knows your work.
* A qualified accountant is a member of an IFAC (International Federation of Accountants) member body and/or a body recognised by law in your country.
https://www.accaglobal.com/gb/en/student/practical-experience-per/practical-experience-supervisor.htmlより抜粋。ただし、文字の装飾は筆者により付加)

という要件を満たしている上司でないと、ACCA協会は受け付けてくれないのです。

 

「qualified accountant」って、要するに『公認会計士』のことですよ!!

「a member of an IFAC (International Federation of Accountants) member body and/or a body recognised by law in your country.」ということなので、自国の「公認会計士」だけでなく、他の国の会計士資格、たとえばUSCPAやACCAでもOKのようです。

※「IFAC」という言葉については、https://jicpa.or.jp/specialized_field/ITI/ifac/をご参照ください。

 

ただ、日本の公認会計士にせよ、USCPAやACCAにせよ、

ここ日本においては、

自分の直属の上司って、会計士の資格を持ってるんですよ!

なんて幸運な人、普通の事業会社では非常に珍しいですよね……?

(海外では、「CFOや経理部長になるためには会計士の資格など持ってて当たり前!」みたいな国もあるようですが)

 

しかしながら、絶望するのはまだ早いです!

直属の上司(line manager)が「qualified accountant」ではない人の場合のために、ACCAは“救済策”を用意してくれています!!

If your line manager is not qualified they can still sign-off your time in a relevant role and you’ll need to nominate an additional qualified supervisor to sign-off your objectives. This additional supervisor could be another manager within the organisation, a consultant or the organisation’s external accountants or auditors who will work with your line manager to validate your experience.
https://www.accaglobal.com/gb/en/student/practical-experience-per/practical-experience-supervisor.htmlより抜粋。ただし、文字の装飾は筆者により付加)

これが意味するところは、

会計士の資格を持っていれば、他の部署の管理職や、会社と契約している外部の会計士でもOK!

ということです。

……とはいえ、社員の中に公認会計士がいる会社というのもまた、ほんの一握りだと思います。そして、外部の会計士でもOKとはいうものの、そもそも上場企業等でなければ、監査法人や会計士のお世話にはなりません(上場企業等以外でもありえるとしたら、税務申告を依頼している税理士さんが「公認会計士・税理士」であるパターンくらいでしょうか……?)

というわけで、結局のところ、この“救済策”をもってしても、自分の実務経験を証明してもらえる「qualified accountant」を用意することは、なかなか難しそうです。

 

以上のように、日本在住の合格者がACCAの「実務要件」をクリアするにあたって、唯一にして最大の障壁となるのが、

自分の実務経験を証明してくれる『公認会計士』を見付けることになるでしょう。

 

もっとも、もし「実務要件」をクリアできなくて、準会員(Affiliate)から正会員(Member)に昇格できなかったとしても、

ACCAの13科目に全て合格し、MBAに匹敵する以上の会計・財務・経営等のスキルを習得した

という事実は変わりません!

そもそも日本では、ACCAの資格を持っていたとしても、それが直接的に仕事やキャリアに役立つことは、ほぼありません。

ACCAの受験を通じて身に付けた高度な知識やスキルを活かして、自分の仕事のパフォーマンスを高める。そういう間接的ですがとても大きい効用こそ、ACCAに挑戦するメリットだと考えております。

 

ですので、MemberになれなくてAffiliateのままだとしても、個人的には、

別にそれでもいいじゃん!

という感じです 笑。

 

今回のまとめ

改めまして、今回の記事で私が何よりもお伝えしたかったのは、

正式にACCAの資格を取得するためには、3年間の実務経験が必要。
ただし、実務経験の証明は『公認会計士』にお願いしなければならない。
それがメチャクチャ大変そう!!

ということでございます。

 

なお、この情報ですが、日本語でACCAの情報を発信しているサイトで言及をしているところは、私が見た限り、一つもありませんでした(2019年12月現在)。

たとえば、ACCA Japan様も、実務要件をご説明されてはいるものの、「公認会計士の上司がうんぬん」という点には全く触れておられません。

まさに、当ブログが日本初ということですね! 笑

 

それでは、ご閲読ありがとうございました!

 

 


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