どうも、クマガワ(@Kumagawa_Pro)です!
今から2週間ほど前に、再びACCA(英国勅許公認会計士)の試験を受けてまいりました。
科目はAB(Accountant in Business)で、結果は合格でした。これで2つ目の科目合格です。
なお、スコアは100点中79点(50点で合格)でした。
勉強期間は(実質)2か月ほどでした。
勉強のスタート自体は12月の初め頃だったのですが、途中、会社の指示で別の資格試験を急遽受けることとなり、1か月間ほどACCAの勉強は中断していました。
さて、『受験体験記』みたいな記事を書きたいところなのですが、前回のFAの試験の時と比べると新しい発見がほとんどなく、内容の濃い体験記が書けそうになかったりします……。
そこで、その代わりといいますか、今回私が受験したAB(Accountant in Business)という科目は一体どんなものなのか?
AB(Accountant in Business)の概要
をお話しさせて頂きたいと思います!
※なお、今回の記事は、全体を通して2020年3月現在の情報を元に作成されています。
ABの全体像
まずは、ABという科目の全体像を見ていきます。
以下、私が使用したテキスト(BPP出版のもの)の「目次」からの抜粋です。
Part A: The business organisation, its stakeholders and the external environment
- Business organisations and their stakeholders
- The business environment
- The macroeconomic environment
- Microeconomic factors
Part B: Business organisational structure, functions and governance
- Business organisation, structure and strategy
- Organisational culture and committees
- Corporate governance and social responsibility
Part C: Accounting and reporting systems, controls and compliance
- The role of accounting
- Control, security and audit
- Identifying and preventing fraud
Part D: Leading and managing individuals and teams
- Leading and managing people
- Recruitment and selection
- Diversity and equal opportunities
- Individual, group and teams
- Motivating individuals and groups
- Training and development
- Performance appraisal
Part E: Personal effectiveness and communication in business
- Personal effectiveness and communication
PartF: Professional ethics in accounting and business
- Ethical considerations
私なりに日本語訳をしてみました(ところどころ“意訳”も含みます)。
Part A: 経営組織、ステークホルダー(利害関係者)及び外部環境
- 経営組織及びそのステークホルダー(利害関係者)
- ビジネス環境
- マクロ経済学
- ミクロ経済学
Part B: 組織の構造、機能及びガバナンス(統治)
- 経営組織、及びその構造と戦略
- 組織文化及び委員会
- コーポレートガバナンス及びCSR(企業の社会的責任)
Part C: 会計並びに報告のシステム、統制及びコンプライアンス
- 会計の役割
- 統制、セキュリティ及び監査
- 不正の識別及び防止
Part D: 個人やチームに対するリーダーシップ及びマネジメント
- リーダーシップ及びマネジメント
- 人材の採用及び選考
- ダイバーシティ(人材の多様性)及び平等な機会
- 個人、集団及びチーム
- 個人及び集団の動機づけ
- トレーニング及び能力開発
- 人事考課
Part E: ビジネスにおける個人の生産性、及びコミュニケーション
- 個人の生産性、及びコミュニケーション
PartF: 会計及びビジネスにおける専門家としての倫理
- 倫理に関して考慮すべき事項
以上を見てみますと、
経営学(組織論)がABにおける中心的な内容だということが分かります。
経営学に加えて、経済学やコーポレートガバナンス等、ビジネスの一般常識的な内容が複数入ってくる、というイメージです。
各項目の内容及びポイント
次に、「目次」の各項目について、一つずつ見ていきたいと思います。
それぞれの項目について、内容の簡単な説明と試験を攻略する上で重要だと感じたポイントをお話しいたします。
Part A: The business organisation, its stakeholders and the external environment
1. Business organisations and their stakeholders
(内容)
『そもそも組織とは何か?』が解説された後で、
株主、従業員、取引先等、組織の利害関係者(ステークホルダー)の説明がなされます。
(ポイント)
ステークホルダーの分類を理解することが重要です。
Internal、External及びConnectedの違いや、Mendelowによる「ステークホルダーのマトリックス」をしっかりと押さえましょう。
2. The business environment
(内容)
ビジネスを取り巻く外部環境全般についてのお話です。
また、初歩的な経営戦略論も含まれます。
(ポイント)
PEST、SWOT、ポーターのバリューチェーン分析やファイブフォース分析といった、経営戦略論の専門用語を押さえるのが重要です。ただ単に用語を暗記するだけではなく、その意味や使い方もしっかりと理解する必要があります。
また、外部環境のうち、労働者保護(Employment protection)の論点については、少々細かい内容まで訊かれる印象です。
3. The macroeconomic environment
4. Microeconomic factors
(内容)
読んで字のごとく、マクロ経済学とミクロ経済学です。
レベルとしては、非常に初歩的です。
(ポイント)
本番での出題頻度が非常に低い分野であり、かつ、(経済学は)後の科目へとつながっていく項目でもありません。
そのため、細かい内容まで全部を理解・記憶しようとはせずに、『分かるところだけ覚えておく』というくらいのスタンスで十分かと思います。
Part B: Business organisational structure, functions and governance
5. Business organisation, structure and strategy
(内容)
組織の構成要素、機能別組織・事業別組織、組織の階層、集権化・分権化といった、
『組織のハード面』に焦点を当てたトピックが中心です(「マクロ組織論」と呼ばれているような分野です)。
(ポイント)
まず、様々なタイプの組織について、その意味や特徴を理解することが大切です。
そのうえで、各組織形態のメリット・デメリットについては、「暗記」をするのではなく、「理論的に考えて導き出す」という姿勢で頭に入れていくとよいと思います。
また、「ミンツバーグの組織の5つの構成要素」は、練習問題等でよく出題されたイメージがあります。重点的に理解・記憶するようにしてください。
6. Organisational culture and committees
(内容)
まず、組織の各部門(研究開発、購買、製造、マーケティング、財務、人事etc)についての解説がなされます。
そのうえで、組織文化や、組織内の委員会(committees)について説明されます。
(ポイント)
企業の各部門のうち、マーケティング(Marketing)については、他と比べて解説の分量が多いため、重点的に押さえておく必要があります。また、財務(Finance)部門については、財務会計(Financial accounting)、管理会計(Management accounting)、資金管理(Treasury management)の違いを区別できるようになることがポイントです。
また、組織文化の論点については、「Scheinの理論」、「Handyの分類」、「Hofstedeのモデル」といった、結構細かい内容まで覚えなければならないという印象でした。問題演習を通じて、少しずつ頭に入れていきましょう。
7. Corporate governance and social responsibility
(内容)
読んで字のごとく、コーポレートガバナンス(企業統治)やCSR(企業の社会的責任)についてのお話です。
(ポイント)
無味乾燥で退屈な説明がひたすらと続きます(少なくとも、私はそのように感じてしまいました苦笑)。
問題演習を通じて『覚えられるところだけ、できるだけ覚えていく』という気軽なスタンスで臨むのがオススメです。
Part C: Accounting and reporting systems, controls and compliance
8. The role of accounting
(内容)
Accounting(会計)に関する論点を概略的に見ていきます。
たとえば、『そもそも会計とは?』、『会計に関する機能や制度にはどんなものがあるのか?』『会計はどのようなシステムで運用されるのか?』、『会計にはどのようなツールが使用されるのか?』といったようなトピックです。
(ポイント)
『次から次へと、細かい事項が列挙されていくなぁ』という印象が強かったです。
その反面、会計に関する一般論的な内容ですので、目新しくて新鮮な発見がほとんどありませんでした……。
そのため、テキストを読む段階では、『ざっと流し読みをしつつ、興味が惹かれたところだけ目を留めてじっくりと読んでいく』というスタンスでよいと思います。そのうえで、問題演習をしている中で、知識の不足を補充していけばよいでしょう。
また、些細なことですが、「Moduleとは何か?」という問題にやたらと出くわした覚えがあります。
9. Control, security and audit
10. Identifying and preventing fraud
(内容)
内部統制に関する事柄です。
(ポイント)
ここの箇所も、『次々と細かい事項が列挙される』という感じです。
『流し読み+拾い読み』で、効率良く学習を進めていきましょう。
ただし、内部監査(Internal audit)と外部監査(External audit)の区別については、しっかりと押さえた方がよいでしょう。試験に出題されるうんぬん以前に、この試験は“会計士”の試験なのですから。
また、マネーロンダリングの3つのステップ(Placement⇒Layering⇒Integration)は、具体的にどういった行為がそれぞれに当てはまるのか、識別できるように、しっかりと理解する必要があると思います。
さらに、以下の用語は、問題演習の中でやたらと出会った記憶があります。ご参考までにご紹介いたします。
・Audit trail
・Teeming and lading
Part D: Leading and managing individuals and teams
11. Leading and managing people
(内容)
リーダーシップとマネジメントに関する諸論点です。
様々な理論が、その提唱者の名前と共に、次々と登場します。
(ポイント)
ABという科目において、非常に重要な地位を占めています。
気合を入れて取り組みましょう!
ファヨール、テイラー、メイヨー、ドラッカーといった、歴史的な経営学者(※注)の名前がたくさん出てきます。まず、それぞれが提唱したマネジメントやリーダーシップの理論について、しっかりと理解する必要があります。理論の内容だけではなく、各経営学者の名前そのものも、暗記が必要となります(試験で訊かれるので)。
注意点としては、想像以上に各理論の細かいところまで覚えなければならないことです。
また、あまり有名ではない経営学者(少なくとも日本では)についても、理論の内容と提唱者の名称を頭に入れる必要がございます。
総じて、『基本を押さえるだけなら簡単だが、完璧を目指そうと思うと急に難しくなる』という印象です。
12. Recruitment and selection
(内容)
人材の採用について、募集や選考に関する様々な手続きが解説されています。
(ポイント)
読み物として普通に面白い内容です。テキストの「読み飛ばし」がしたくなる箇所も少ないと思います。素直にテキストを読み進めていけば、内容がすっと頭に入っていくことでしょう。
個人的には、『面接(Interview)は選考の方法として最も有効性が低いのに、ほとんど全ての企業が行っている』という記述が、印象に残っています。
13. Diversity and equal opportunities
(内容)
職場における従業員等の平等な取扱いや多様性(Diversity)についてのお話です。
(ポイント)
分量が非常に少なく、覚えるべき内容もあまりございません。
差別の種類(Direct discrimination、Indirect Discrimination、Victimisation)や
Positive discriminationとPositive actionの違い、あたりが要チェックです。
14. Individual, group and teams
(内容)
「個人、集団およびチーム」というタイトルですが、チームに関するトピックが内容の中心です。
(ポイント)
何と言っても、「Belbinの“チームメンバーの9種類の役割”」の出題可能性が非常に高いです。かなり覚えにくいのですが、頑張って頭に叩き込みましょう 苦笑(文字通り、「9つの役割」をすべて記憶する必要があります……)。
あとは、「Tuckmanの“チームの発達度合いのステージ”」あたりも頻出です。
さらに、
・Groupと単なる人の集合との違いはIdentityが存在しているかどうかである。
・Multi-disciplinary teamとMulti-skilled teamの違い
なんかも、チェックしておくとよいと思います。
15. Motivating individuals and groups
(内容)
「マズローの欲求段階説」、「ハーズバーグの動機づけ衛生理論」、「ブルームの期待理論」、「マクレガーのX理論・Y理論」、「内発的動機づけ」といった、
組織論(厳密には、ミクロ組織論ないし組織行動論)や人的資源管理論の入門書を読んだら必ず出てくるような、メジャーな論点が目白押しです。
(ポイント)
読み物として普通に面白い内容ですので、テキストを読んでいるだけ無理なく内容が頭に入ってくると思います。
また、「11. Leading and managing people」と違い、あまり有名でない人名やマイナーな感じの理論も出てきませんので、記憶や暗記の負担も大きくはありません。
16. Training and development
(内容)
組織における人材育成に関する諸理論がテーマです。
(ポイント)
「4つのLearning style(Theorists、Reflectors、Activists、Pragmatists)」は頻出というイメージです。
この他にも、
・Development、Training、Educationの違い
・Off-JTは「minimize risk」、OJTは「maximize transfer of learning」が特色
あたりは要チェックだと思います。
17. Performance appraisal
(内容)
組織における業績評価≒人事考課に関する各種トピックです。
(ポイント)
分量が少なく、細かい内容もほとんどありませんので、あまり気構えず気楽に取り組んでいけばOKだと思います。
Part E: Personal effectiveness and communication in business
18. Personal effectiveness and communication
(内容)
仕事の効率化や組織内のコミュニケーションを切り口として、雑多な内容が語られています。
(ポイント)
まさに「雑多」という言葉がピッタリで、重要性があまり高くなく、お互いに関連性の乏しい項目が、次から次へと登場してきます。
一つ一つの難易度は低めで、理解が難しいと感じる箇所はないと思います。しかしながら、細かいところまで完璧に覚えるのは、非常に骨が折れそうです……。
『勉強をする』というよりも、『(実際の仕事をする上でも)役に立つ内容を拾い上げる』というイメージで学習に臨み、『覚えられるところだけ、できるだけ覚えていく』とよいかもしれません。教科書ではなく、ハウツー本や自己啓発本を読むような気持ち、といった感じでしょうか。
PartF: Professional ethics in accounting and business
19. Ethical considerations
(内容)
ビジネス一般や会計士の業務における倫理についての内容です。
(ポイント)
細かいうえに、面白味もあまりない項目のオンパレードです(苦笑)。
テキストは流し読み程度に抑えておき、問題演習を通じて、出題可能性の高い内容だけをしっかりと理解・記憶するという方法で学習するのが適切だと思います。
総括
『高得点を狙うのはなかなか難しいものの、合格点(50%)を取るだけならばかなり易しい』というのが、ABという科目に対する印象です。
計算問題がほとんど出題されず、かつ、ビジネスの一般常識的な内容が数多く含まれているため、「知らなくても推測できる」問題の割合が高めなのです。
反対に、「用語を知っているだけでは足りず、そこから論理的に推論を働かせないと解答できない」タイプの問題も多いです(メリット・デメリット系の問題etc)。
下手をすると、人によっては、全く勉強せずとも合格できてしまうかもしれません。
経営学をそれなりにしっかりと勉強した経験があり、英語の読解力に問題が無い人であれば、50点くらいなら「ノー勉」で取れてしまうかと思われます。
とにもかくにも、現役のビジネスマンであれば、「自己啓発」のような気楽な感覚で勉強して、そのまま気楽な感じで合格することが可能。それがABという科目です。
受験予定の方におかれましては、気負わずに臨んでみて下さい!
今回はここまでです。
ご閲読ありがとうございました!!
(※注)
実を言いますと、厳密には「経営学」の「学者」ではない人物も多数含まれています。
しかしながら、分かりやすさを優先するため、ひとまとめに「経営学者」という言葉を使いました。
何卒ご理解とご容赦を頂けましたら幸いです!
クマガワさん
はじめまして。
本日本ブログを発見し、大変興味深く読ませていただきました。
今後も楽しみにしております。
Sさん、コメント頂きまして誠にありがとうございました!
会社員として働きつつ、ACCAの勉強をしつつ、ですので、
亀みたいにノロノロと更新していく当ブログではございますが、
少なくともACCAの最終合格までは完走していきたいと思っておりますので、
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます!!
はじめまして。イギリス在住のACCA資格保持者です。
よくACCAの事分析されてると思います。日本人が取得するには努力に報酬が見合っていない資格といえるかもしれませんが、自己満足にはいいかもしれません。道のりは長いですが頑張って下さい。
おぉ! ACCAの資格をお持ちの方からコメントを頂けるなんて!!
感謝感激です! ありがとうございました!!
おっしゃる通り、ACCAは時間と費用がかなり多く掛かる割には、日本での知名度は皆無で、『資格としての価値』は乏しいかもしれません…… 汗
ただ、だからこそ、このブログを通して情報発信をしていき、少しでもACCAの知名度向上ひいては取得価値の増大に貢献できればと思っております!
今後ともよろしくお願い申し上げます。