どうも、クマガワ(@Kumagawa_Pro)です!
前回の記事では、ACCAの論述問題(記述問題)の学習方法について、全科目に共通するような“総論”的な内容をお話しいたしました。
ただ、実際の受験勉強では、科目に応じて論述問題の勉強法を少しずつ変化させておりました。
そこで、今回の記事では、私自身がACCAの論述問題の対策として実際に行った勉強方法について、
科目ごとに詳細を補足していきたいと思います。
TX
まず最初にTX(Taxation)についてお話しいたします。
いきなりですが、この科目については、前回の記事でご紹介した
『問題文の概要と解答のポイント』は作成しませんでした!
あれだけ重要性を強調していたにもかかわらず、です 苦笑
そもそもですが、TXの試験では、純粋な「論述」の問題は出題されません。
「記述式」の問題は存在します。配点にして40%です。
ただ、その内容はほとんど計算問題なのです。文章を書いて解答する部分もございますが、淡々と計算の過程や税金の制度を説明するだけに過ぎません。
それゆえ、短答型の問題の学習さえしっかりとできていれば、記述式の問題について何か特別な対策をする必要はないといえます。
その代わり、短答型の対策は入念に行いました。
他の科目の短答型問題の学習では、問題集とテキストを2周回せばかなり自信のあるレベルに到達できました。しかし、TXについては、問題集とテキストを2周するだけでは、知識が十分頭に定着していると感じることができませんでした。
そこで、追加で“3週目”を行ったほか、自信の無い問題については別途ルーズリーフに問題と解答のプロセスを書き出して後で何度も見返しました。
FR
次はFR(Financial Reporting)についてお話しいたします。
この科目についても『問題文の概要と解答のポイント』は作りませんでした…!
FRも「記述式」の問題が出題されるとはいえ、その中身は計算問題であったり、会計学上の概念や会計処理のプロセスや根拠を説明するだけだったりするものが多いです。それゆえ、短答型問題の対策を行うだけでほとんど事足りてしまいます。
ただ、FRについては、短答型の勉強をするだけでは解答が難しいタイプの論述問題が存在します。
それは、財務分析系の問題です。財務諸表を元に様々な指標を算出したり、過去の実績や同業他社or業界平均との比較をしたりしながら、対象企業の収益性や安全性等を評価するやつですね!
短答型の問題では、指標の計算や意味等は出題されても、そこから先、指標の“使い方”までは深掘りされません。そもそも、財務分析系の問題を出題するためには前提として財政状態計算書や包括利益計算書等の“全体”が必要なので、短答型ではほとんど出題されません(というか、できません。)。
そのため、FRのうち財務分析系の問題だけは、論述対策として別途特別な学習を行う必要性が高いといえます。
そこで私の場合は『財務分析の視点』という補助資料を作成いたしました。財務分析系の論述問題を解いた後で、模範解答を読みながら「なるほど! この視点は覚えておこう!」と印象に残った部分を、箇条書きでWordファイルに書き出しておりました。
たとえば、こんな感じです↓
・今年度のTax chargeが急増している場合、昨年度は税金を過少に払い過ぎていた可能性がある。
・ROCEが低下していたとしても、それが買収等によりCapital employedが増加したことによるものであれば、あまり心配する必要はない。
・Interest cover(=PBIT/Interest charge)が低くなると、その企業への投資のリスクは高くなったと評価できる。
・企業買収があった場合、その買収の影響を除外した指標を別途計算して分析することも重要である。
・Cashが乏しい状態なのに配当を支払うのは、多くの場合は悪手である。
等々……。これらはほんの一例です!
PMとFM
続いてPM(Performance Management)とFM(Financial Management)についてです。
これら2科目の論述対策に関しては、
『問題文の概要と解答のポイント』を作成したのみで、それ以外の補助教材は作りませんでした。題材もBPP社の問題集1冊のみで、Kaplan社の方を追加することはありませんでした。
PMとFMの記述式問題は、TXやFRとは異なり、全てが計算問題や短答型の延長で解けるほどシンプルではありません。文字通り「論述」による解答が必要な部分も多いです。
ただ、後述するSBLやAPMとは違い、「論述」部分の比重や難易度はそこまで高くありません。計算問題も結構多めに含まれています。
以上のことから、PMとFMについては“オーソドックス”な論述対策で過不足ありませんでした。
すなわち、『問題文の概要と解答のポイント』を一通り作成したのみで、2冊目を追加したり、補助教材を製作したりまでは不要でした。
AA
次はAA(Audit and Assurance)についてです。
この科目の記述式問題には計算部分がほぼ一切含まれておりません。そのため、「論述」の対策が当然必要になります。
したがって、『問題文の概要と解説のポイント』を作成することになります。
ただ、AAの論述問題は、バリエーションがそんなに多くありません。
「この状況において有効な監査手続きは何か?」
「〇〇に対して効果的なcontrolの方法を説明せよ」
「本件におけるAudit risksを分析しなさい」等、
ほとんどの問題が、何種類かの限られた出題パターンに分類することができます。
そもそもAAという科目自体、覚えるべき知識量が他に比べると非常に少ないです。そのため、比較的少数の問題だけで試験範囲の全体を網羅することが可能です。
以上より、AAにおいては、問題集1冊分の『問題文の概要と解答のポイント』を作成すれば、記述式問題に必要な知識や解法は十分にカバーできると思われます。2冊目の問題集を追加する必要性は低いでしょう。
また、補助教材の作成も要らないと思います。少なくとも私は作りませんでした。
ただ、「○○という状況において有効な監査手続きの一覧」のようなリストを作成するのはアリかもしれません。先述の通り、AAの論述問題は、状況ごとに効果的な監査手続きを羅列させる問題が多く出題されますので。
あるいは、暗記すべき知識をまとめたノートみたいなものを作るのもいいかもしれません。AAは暗記すべき知識量が少ない分、かえって暗記が疎かになってしまいがちです。そのため、暗記用の教材を用意するのは意外と効果的だと考えられます。
AFM
ここからはProfessional Moduleの科目群です。
まずはAFM(Advanced Financial Management)からです。
『問題文の概要と解答のポイント』については、BPP社の問題集1冊だけを使って作成いたしました。Kaplan社のものは追加しておりません。
AFMの問題は全て記述式ですが、計算問題も多く、また、「論述」の部分もそこまで難易度が高くありません。そのため、2冊目にまで手を出す必要はありませんでした。
ただ、過去の記事で言及したように、AFMは計算問題の方にかなり難易度が高い項目が含まれています。たとえば、為替や金利のデリバティブ(=先物やオプション)です。
そこで私は、
為替や金利のデリバティブに関してだけは、
計算問題の部分を全て抜き出して、問題の内容と解答のプロセスをルーズリーフに書き記していきました。
その狙いは、
・書き記していく過程で理解を深めたり整理したりする。
・直前期に集中的に見直しができる資料を用意する。
ことでした。
SBR
次はSBR(Strategic Business Reporting)です。
結論から申し上げますと、この科目については、
補助教材は作らなかったものの、
『問題文の概要と解答のポイント』は問題集を2冊(BPP社とKaplan社)使って作成いたしました。
まず、SBRにおいてはテキスト自体が“最高の補助教材”だといえます。
SBRの論述問題が解けるかどうかは、結局のところ、会計基準や会計学上の概念等がしっかりと頭に入っているか否かにかかっています。
この点、SBRのテキストは(少なくとも私が使用したBPP社のものは)、会計基準や会計学上の概念等がかなりきれいに整理されて記載されています。また、難易度が高過ぎる項目は含まれていないため、テキストだけでは理解が難しい箇所というのも少ないと思います(※1)。
以上より、SBRの学習中に知識の不足を感じた際は、今一度テキストに戻り、必要な箇所を改めてしっかりと読み込むのが一番だといえそうです。
とはいえ、テキストを読むだけではなかなか論述問題を解けるようにはなりません。『問題文の概要と解答のポイント』の作成は必須です。
ただ、ここで問題となるのが、
SBRは試験範囲が広く、テキストも分厚いのにもかかわらず、
問題集1冊当りに掲載されている問題の数が多くないということです(※2)。
そのため、BPP社のものだけではなく、Kaplan社の問題集も追加した次第です。
(※1)
ただし、一部の項目は、テキストだけでは“本質的な理解”を得るのが難しいです。たとえば、連結会計や退職給付会計といった分野です。
そうした項目については、日本基準のものでもいいので、ネットや書籍等で理解を深めるのもありだと思います。ただ、自力で補助教材を作成することまでは要らないと思います。
(※2)
・そもそも全ての問題が記述式なので、過去問の蓄積も多くなりにくいですし、紙面の都合上載せられる問題の数にも限りが生じる。
・SBRは割と最近できた新しい科目(それまでにあった複数の科目が統廃合されて作られた。)なので、古い過去問の中には、最近の試験対策としては使いづらいものも結構多いと思われる。
・会計基準は頻繁に改正されるものなので、現在の環境では試験対策として使用できない過去問も出て来てしまう。
といった理由が考えられます。
SBL
続いてはSBL(Strategic Business Leader)です。
この科目の試験はほとんど全て純然たる「論述」型の問題で構成されているため、
『問題文の概要と解答のポイント』は当然作成しました。
ただ、SBRと同様、問題集は2冊使用いたしました。
・全問記述式の科目のため、過去問の蓄積数が多くないうえに、問題集1冊に乗せられる問題数をあまり増やすことができない。
・SBLも比較的新しい科目であり、古い過去問だと現在の試験対策として不十分なものが少なくないと推察される。
・出題内容が経営コンサルティング的なケーススタディであり、解答においては知識そのものよりも知識の“使い方”の部分が遥かに重視される。逆に言えば、1問当りでカバーできる知識の量が少ないということでもある。
といった理由からです。
また、基本的にSBLの問題は、
① テキストに書かれているような汎用的な知識を思い出す。
↓
② その知識を問題に書かれている状況に当て嵌めて分析を行う。
という流れで解答を書くことになるのですが、
『問題文の概要と解答のポイント』を作っていくだけでは、①の「汎用的な知識」が十分に身に付かないように感じました。
前述の通り、SBLは1問当りでカバーできる知識量が少ないからです。
そこで、試験で使いそうな「汎用的な知識」をしらみつぶしにテキストから抜き出して整理した資料を作成いたしました。全部でA4用紙63枚の大作になってしまいました…… 苦笑
この他にも、直近3年間の過去問を全て見比べて、
・解答で書くべき書類の形式(Briefing notes、Report、Presentation slides等)
・設問の指示(〇〇をexplainせよ、analyseせよ、evaluateせよ等)
・問われているProfessional skill(Communication acumen、Scepticism、Communication等)
を分析しました。
そのうえで、「〇〇というタイプの問題が来たら、こうした方がいい。」という、試験本番での“答案戦術”みたいなものをまとめ上げました。
以上のように、SBLは何かと補助教材に力を入れた科目でもありました。
APM
最後にAPM(Advanced Performance Management)です。
まず、『問題文の概要と解答のポイント』は問題集1冊分のみを作成しました。
APMは試験範囲があまり広くないためか、2冊目を追加する発想は全く頭に浮かびませんでした。
ただ、補助教材はいろいろと製作いたしました。
たとえば、『問題文の概要と解答のポイント』で出て来た知識をテキストに登場する順番に整理してまとめ直した資料を作りました。
といいますのも、APMでは、或る問題で使った知識が割とページの離れた別の問題で再度出現するケースが結構多かったのです。そのため、学習の効率化を図るべく、バラバラに分散した知識をつなぎ合わせて再編成した次第です。
また、重点的に暗記が必要な項目を集めた資料も用意しました。
APMも全ての問題が記述式なのですが、計算問題の割合が思いのほか非常に少なく、ほとんどが「論述」形式の問題です。そして、同じく「論述」中心のSBLとは異なり、知識をしっかりと暗記していないと解答が書きづらい設問が多いです。
そこで、暗記用の資料を追加で作成いたしました。論述問題は文章で解答するため、暗記が必要な知識については短答型の場合よりも数段上のレベルで正確に覚えなければなりません。
さらに、数少ないAPMの計算問題の中でもEVA(Economic Value Added)を算出する問題は割と頻出なのですが、計算方法の具体例がテキストに詳しく載っていませんでした。また、日本ではあまり馴染みのない概念なので、ネットでも上手く情報を拾えませんでした。
そのため、EVAの計算問題をその解答を問題集から集めてきて、EVA専用の教材を自作しました。
まとめ
以上の内容を改めてポイントだけまとめますと、以下のようになります。
Skills Moduleの科目群
TX
・『問題文の概要と解答のポイント』は作成せず。
・ただし、短答型や計算問題の対策はしっかりと!
FR
・『問題文の概要と解答のポイント』は作成しなかった。
・ただし、財務分析系の問題については『財務分析の視点』を抽出して整理した資料を作った方がよさげ。
PMとFM
・オーソドックスな対策で過不足無し!
=『問題文の概要と解答のポイント』を1冊分作成。補助教材は無し。
AA
・オーソドックスな対策でOK
・ただ、補助教材を作成するのも悪くない!?
Professional Moduleの科目群
AFM
・『問題文の概要と解答のポイント』は1冊分を作成。
・難易度が高い項目はしっかりと補助教材を作るのがオススメ。
SBR
・『問題文の概要と解答のポイント』は2冊分作成。
・補助教材の「自作」は不要だが、テキスト以外の書籍で理解を深めるのは有効。
SBL
・『問題文の概要と解答のポイント』は2冊分作成。
・補助教材もかなりの量を自作。
APM
・『問題文の概要と解答のポイント』は1冊分を作成。
・補助教材もいろいろと製作。
今回はここまでです。
ご閲読ありがとうございました!
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